丹 沢 通 信  No.18  2001. 1.19.
ニュージーランドのトレッキング
多湿なので苔が多く屋久島のようだ。シダ類が多いのは太古、この島が熱帯から移動して、当時の植生から淘汰されて残ったものである。ヤシのように背の高いシダ類も見られる。

前回の丹沢通信でミルフォードトラックに行きますので小屋の様子を報告しますと書きました。日本では考えられないようなトレッキングなので小屋だけでなく少々詳しく報告します。

ミルフォードトラックが4泊5日、1日おいてルートバーントラックが2泊3日の行程です。ここでは歩いた経過や景観ではなく、設備と運営を重点に書きます。両トラックとも自然保護のため一日に入山できる人数をミルフォードで50人弱、ルートバーンで24人に制限し予約制です。

最も強調したいことは、あらゆる点で「快適に歩ける」ことに徹底していることです。日本の山では山岳信仰の流れを汲んでいるのでしょうか一種の行、或いは訓練という色彩がややあり、難行苦行の末山頂をきわめるという感じがあります。
今回のニュージランドトレキングでは徹底して歩くことを楽しむということでした。どちらが良いというのではなく、いろいろな山行があってもよいと思いました。

今回はアトラストレックという海外山行を専門とする旅行社のツアーで出かけました。このツアー参加者が9名+ツアーリーダー1名で日本人が10名、ほかに各国からの参加者を含めて全員で46人の国際(?)ツアーです。ほかにガイド3名です。私達のようにトレッキングの目的で準備して来ている人だけでなく、旅行の序でにという人もいますのでザック、雨具の貸出もあり、結構使われています。出発の朝ホテルで行程や装備の説明会があり、ユースホステスで使うような袋状のシーツが貸し出されます。また不足の品があれば隣接する事務所で買えます。

出発の前に荷分けです。旅券など貴重品は事務所で預かって貰えます。トレッキングが終わりますとホテルで完歩式と、翌日のクルーズがありますので、その衣服は送って貰えます。トレッキングの後は同じホテルの戻りますので不要な荷物はホテルで預かって貰えます。持って行くのはトレッキングに必要なものだけです。(私達の日本の山行では帰途の着替えをズーット持って歩きますが)

出発に先だって事務所前で全員の記念撮影が行われます。バスと船を乗り継いでトレッキングの出発点に向かいます。
ミルフォードトラックの大部分はかって氷河で削られた谷間である。広い谷間の両側に1000m以上の山がつらなり、各所から滝が落ちる。この滝はサザーランド滝で3段の落差570mは世界5位。

ガイドは先頭と末端、そして途中に1名の配備です。全員が日本の山ツアーのように1列になって歩くのではありません。先頭ガイドが出発しますとあと適当に三々五々と歩き始めます。先頭のガイドの後ろ、末尾のガイドの前ならどこを歩いてもよいのです。足の早い人、遅い人、ゆっくり写真と撮る人、のどかな風景に昼寝する人、皆勝手に歩きます。ミルフォードトラックでは一方通行なので2,3分も離れれば広大な天地に夫婦二人という感じです。この個人の気ままに、或いは個人差の尊重は食事にもよく現れています。

道は非常によく整備されています。ミルフォードでは峠の前後以外では1m幅で、小さな作業車が入って道路の補修に当たっております。道には砂利が敷き込めております。平坦な場所では道の両側に、斜面では山側に側溝が設けられて雨水を流すようにしてあります。側溝に落ちた土石、生えた草などはすくいあげられて道に敷かれておりました。

道は急斜面でも足だけで歩けます。決して両手を使うことはありません。日本と土質が違うのしょうか、泥濘は殆どありません。かっての丹沢のように登山道が雨水で深く掘り流されるような所は皆無でした。

大小の川に架かる橋の踏み板には必ず金網(種類はなんて言うのでしょうか数センチの亀甲目の細い針金の網です)が被せられ滑り止めになっております。金網の新しさから多分シーズン始めに更新しているようです。

吊り橋は必ず許容負荷量を1人、或いは5人と注意書きがあります。吊り橋に渡される踏み板には上記の金網のほか、両端には厚さ1cm程の細い木が打ちつけられて、これも滑り止めになっております。更に両側に腰までの高さに金網が張ってあります。安全に渡るために十分に配慮されています。

山小屋はガイドつきツアーの泊まるロッジと、個人で寝具、食料持参で泊まるハットに峻別されております。1ケ所だけ新設のハットを見たのですが広い部屋に2段ベッドが並びベッドにはマットが置かれています。別棟に食堂があり、コンロ(ガスつき)、流しがあり、更に別棟に水洗トイレがあります。

ミルフォードトラックで私達の泊まるロッジの生活を書きますと、まず到着して部屋に荷物を置いたら石鹸、シャンプーつきのシャワー(勿論湯です)で汗を流し、一人一人に貸与されるバスタオルでサッパリします。給湯されている洗濯場で下着を洗い燥室室に吊れば夕食後には乾燥しております。従って着替えも少なくてよいのです。

洗濯が終わればロビーに入って飲み物で一休みです。コーヒー、紅茶、ミロ(日本でも一時宣伝していましたがあまり飲まれていないようです、麦芽飲料でしょうか)、オレンジジュースが自由に飲め、クッキーまで添えられています。

5:30(時刻は小屋によって違う)になると、バーが開くといって缶ビール、ワイン(瓶又はグラス)が買えます。ビールは3種類、ワインは赤、白。料金はガイドが名簿にチェックしてツアーの最後に精算です。従って現金を持ち歩く必要はありません。

夕食の時刻になりますと、ツアー全員がテーブルに着きます。メニューはスープ、メイン、デザートです。セルフサービスで各自取りに行きます。ダブルで貰うことも出来ます。パンはトーストしたもので色々なジャム、マーマレード、バターなどが備えられています。メインとデザートはロッジ毎に変えてあり、同じものち続けて食べるようなことはありません。

夕食後がロビーで自由にくつろげます。第1日目はツアー参加者が国別にグループになって前に立って名前と何処から来たか(私ならカワサキ)、そして余興としてグループで歌を歌います。その後ちょっとしたチームゲームがあり声援やら笑い声で終わります。このツアーの参加者は当日顔を合わせた人達ですからこのような自己紹介や歌、ゲームで知り合い仲良くしようといツアー主催側の試みです。

そしてスライドで翌日の説明です。日本人にはスライドの説明が日本文で書かれた紙を渡されますから分かります。

10時に消灯ですが廊下は点いたまま、トイレは点灯できます。ヘッドランプが要るのは自分のベッドから部屋の扉までです。

寝室は4人、6人、8人用で2段ベッドが置かれています。テッシュ、防虫スプレー、湯たんぽ、予備の毛布が置かれています。ベッドには厚いマットが敷かれ、掛け布団と枕が置かれています。

翌朝時間になると食堂が開きます。ベーコンエッグとトースト、シリアスに各種飲み物です。これは何処でも同じでした。
弁当はラップに包まれたサンドイッチ、クッキーなど数種の菓子類、リンゴとオレンジが置かれ、自分で好きなものを選んで紙袋にいれます。

昼飯は何処で食べてもよいのですが、途中1カ所に小屋があり、先頭ガイドが湯を湧かしてコーヒなどの飲み物、スープを準備しております。

ミルフォードトレックの3日目は峠越えです。ちょうどガスがかかり風が冷たかったのですが、峠では先頭ガイドがオレンジジュース、コーヒー、紅茶、スープを用意してくれました。昼食前だったので暖かいスープには助かりました。

最終日はミルフォード湾のホテル級ロッジ泊でトレッキングは終わりです。夕食のあと完歩証がひとり一人名前を呼ばれて渡されます。この完歩証に初日撮影した写真が添付されています。ここまで寝食を共にした各国の人達はお互いに顔見知りになっており歓談となります。私達日本人グループの中にプロのオペラ歌手がいましたので、ガイド3人を我々のテーブルに呼んで感謝の気持ちを込めて彼女が一曲歌いました。太喝采でした。

翌日ミルフォードサウンド(深い湾と切り立った両岸の山)のクルーズのあと、バスで出発点に戻って終了です。

以上のように設備、運営面で「楽しく歩く」ことに徹底していますが、これを支えるのがガイドです。ミルフォードでは若い3人の女性です。皆を引率するだけでなく、全員に気を配り、ロッジに着けば厨房を手伝い、参加者と一緒に食事をしてオシャベリに加わるなどサービスのプロです。

ルートバーントラックでは24人のツアーでしたがやはり3人のガイドでした。ただ歩くだけでなく肉やパンなどの食料まで運びます。ガイドの一人は日本人女性ですが、初日は20kgのザックを背負い早足で歩きます。行き過ぎた人を追いかけるときは荷を降ろさずそのまま上り坂を走りましたのにはびっくりしました。

ロッジにつけば管理人は1人なのでガイドも一緒になって食事の準備です。忙しく立ち回り、そして手際良く準備します。我々の食事中に追加希望の料理を配ったりトーストを追加したりします。食事が終われば我々は本や写真集やゲーム道具のあるロビーでくつろぎますが、ガイド達は自分の食事と後かたづけです。朝出発した後も後発のガイドはモップを持って掃除です。
歩いている間にも植物や花を説明し、地質を説明し、写真によい場所を教え、チョコレートを配ったりの八面六臂のサービスです。いやはやたいへんなものです。

このように整備された諸設備と運営、そして行き届いたガイド達のサービスというたいへんよい待遇を受けましたが、それなりの対価の支払があります。ミルフォードトラックは一人約10万円、ルートバーントラックでは旅行案内書によれば約5万円です。

ここでそろばん計算をツアーリーダーの柿沼さんとしました。(スイスでガイドをしている柿沼さんについては続編で紹介します)ミルフォードトラックは一日40人とすれば400万円、半年の稼働でがシーズンの初めと終わりは少ないとして100日とすれば4億円の収入、スタッフは50人らしいのでこれも半年間の人件費とすれば・・・・・施設のメンテナンスを十分行ってもそこそこ儲かりそうです。

このトレッキングの間に私の思ったことは、日本でも似たようなことができないかということです。知床原生林トレッキングとか八幡平ぶなトレッキングとか如何でしょうか。

ミルフォードは峠の登降はありますが大部分は氷河が作ったU字形の平坦な広い谷間を歩きます。それに対しルートバーンは山腹の森林限界付近の標高1000m前後を登り下りしながら歩きます。道も細くなりますが日本の山道より広いです。
今回のツアー仲間の一致した意見は山に登る人にとってミルフォードはもの足りない、ルートバーンが良かったということです。これから計画される方のご参考に。

長くなりましたので旅行を通じて見聞きした雑多な話題を次号でお届けします。
なお数人の読者からアドバイスを頂戴しました。ありがとうございました。

--------------------------------------------- tanzawa report ----------
配信登録と解除は右のシステム(発行部数)で   まぐまぐ(628)  Melma!(65)
発行:不定期  発行者:塚本 宏  バックナンバーは  ご意見・ご連絡は
------------ 丹 沢 通 信 -----------------------------------------------