丹 沢 通 信  No.14  2000.10. 1.
歌曲「丹澤」の場所は?

第13号で歌曲集「沙羅」の中にある「丹澤」を掲載しましたところ、地元秦野市の松隈さんが、歌われた地点を歌詞から詳細に解析・検証してくださいました。まず歌詞を再録します。

   枯れ笹に陽(ひ)が流れる、背に汗
   うらと雲さへも、冬なのに
   尾根長く檜洞(ひのきぼら)こえて響く澤おと
   どの山も崩土(がれ)の色だけは凍ててゐる
   塔のむかふ町並光らせて秦野
   見やる天城も明るい草附き
   雪の来ぬ冬山のくぼに煙草吸うて見る
   ひとり

以下松隈さんのメールです。
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丹沢通信No.13を興味深く拝見しました。 その中で歌曲『丹澤』話がありましたが、私なりの勝手な解釈ではありますが、思い当たるところがありましたので、お知らせがてら、メール致します。
「丹澤」の歌詞を読んでピンときたのは『その地点』が『同角の頭』の南側稜線、正確には『ザンザ洞の頭』の直下----と私は確信しました。

その場所は丹沢核心部のユーシンから北部へのびる同角稜線で、大石山の先に位置しています。 同角稜線は、丁度桧洞丸から南に突きだした感じの地形で、同角の頭からザンザ洞の頭の山頂付近の原生林帯を外したその場所に出れば、丹沢の高峰群が一望できます。 稜線は南に向かって開けていますので、鍋割山の後沢乗越を通して南南東方向に秦野の街が遠望できます。逆に、秦野から見える唯一の高峰が同角の頭(丹沢山塊高峰第10位にランクされ塔ノ岳より高い)でもあります。

また、視線を少し左に寄せれば、塔(塔ノ岳)が、視線を反対に右に寄せれば箱根を越して(明るい草付きまでは判別できませんが)天城が遠望できます。背後の主稜線のガレは間近に望めますし、足下はザレの崩落でザンザや同角に急落していきますから、遠目にも近目にもガレは目立ちます。背後の原生林で北風も遮れるので、初冬景色がのんびりと楽しめます。

ところで、『尾根長く檜洞(ひのきぼら)こえて響く澤おと』とありますが、今は『桧』の字を当てて桧洞とするのが一般的ですが、山の桧洞丸は同角のピークの背後にあります。 そこを源に同角稜の東斜面に流れ出す沢を桧洞沢と言いますが、単に『桧洞』とも言います。 桧洞沢は南北にのびた同角の稜線と並行して深い谷になっています。 ザンザ洞は桧洞の支流ですから、谷から稜線に突き上げてくる沢音とあいまって、景色良く、歌詞のシチュエーションをそろえています。

『檜』とか『澤』の字のほか言葉遣いからして、作詞の時期は古いとも思われます。 同角稜の麓のユーシン辺りは古くから林業基地で、例の山神峠越えの玄倉からの道があったと聞き及びます。 しかしご存じのように稜線は結構険しいですので、作詞当時を昭和初期とすると、作詞者が山登リに達者でないとこの地にこれません。 『塔』と書かれているのは『塔ノ岳』であることは疑う余地がありませんが、その昔には玄倉方面の地元では『御塔』とも呼んだらしいです。 塔』は山岳関係者にしか通じない言葉ですから、作者はきっと熟達者であろうとも考えられます。

ザンザや同角と言えば丹沢の象徴のようなものですから、作者はきっとこの地のことを唱ったと思います。

(この地へのアクセス)
玄倉(丹沢湖北東湖畔)--玄倉林道(徒歩 約2.5時間、車は入れない)-- ユーシン -- (大石山、石小屋の頭、キレット経由で約2.5時間) -- ザンザ洞の頭(同角の頭)
 注意1: 玄倉林道には隧道が4〜5箇所ありますので、昼でも懐中電灯が必携です。
 注意2: 大石山とキレット間には鎖場(大石直下)と梯子場(数カ所)がありますので、中級者向きのコースです。
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松隈さんは秦野山岳会の会員で丹沢の主みたいな方です。第4号で玄倉の「山の神」を、ごく最近では第11号で「早戸大滝」を掲載させていただいております。

実際に歩いて見て分かる展望などさすがに丹沢の主ですね。そして歌詞の用語「澤」とか「塔」から年代的、地誌学的解析をされておりま す。

歌詞を寄せられた京都の森さんに私は「特定の場所というより丹沢全体の心象風景ではありませんか」などと無責任なことをメールしてしましました。恥ずかしい(;_:)

松隈さんは「作者はきっと熟達者であろう」と推測されております。作詞者の清水重道さんを調べたら趣味=登山なんて出てくるのではないかと思って少々調べたのですが分かりませんでした。ご存知の方は教えて下さい。

話は代わりますが、蛭ケ岳山荘に「蛭」を聞いたことは前号で書きました。その関係で山荘からいろいろとお便りを頂戴しました。ホームページを開設しておりますので機会がありましたらご覧下さい。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~hirugata/

予想もしなかった皆様からの反響の連続で、10日間で丹沢通信を4通発行することになりました。嬉しい悲鳴です。これからも宜しく。

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