丹沢通信No.138  2010.5.5. △top page
二十六夜山、信仰の伝説 △tanzawa report

 昭文社の地図「高尾・陣馬」の中央やや下(南)に「二十六夜山」という変わった山名の山があります。 同じ名前の山が都留市にもあります。  変わった名前でしかも近くに同じ名の山が二つもあるということでいつも気にしていました。
 冬に登るには手頃な山なので年初に計画してインターネットで山名の由来などを調べると二十六夜待ちという 信仰が往事にあって、旧暦1月と7月の26日の夜(月の出は翌朝2時頃)に三日月のような細い月の出を拝みます。 この時月光の中に阿弥陀仏・観音・勢至の三尊が現れ、これを拝むと御利益があると伝えられていました。
 この信仰は明治になって急速に廃れたようです。でも山名に名を残すのですから興味が沸きます。

 旧暦の1月26日は今年なら3月11日です。この日に登ろうかと計画したのですが色々支障があって、 やっと5/1(土)に登ることができました。
二十六夜の石塔のある広場、中央木陰に塔がある 廿(二十)六夜の石塔、明治22年7月吉日の日付がある。裏面には建立寄付者と思われる数名の苗字がある 二十六夜山の狭い山頂、右下は三等三角点

 上野原駅から無生野(ムショウノ)行きバスは十人足らずの乗客を乗せて、山と沢と散在する小さな集落を縫うようにして 走ります。約40分後浜沢で下車します。ここで夫婦1組と私が降りたら乗客はいません。 登山口が分からず教えられて近くのおまんじゅう屋さんで道を聞きました。この店は竃に太い薪を焚き6-70cmほどの 大きな角型の蒸籠で蒸していました。一つ買って後で頂きましたら昔の素朴な味でした。

 道はキャンプ場を抜けるとやや急坂になります。別荘風の数軒の家を過ぎると舗装道から未舗装、そしてすぐ山道 になります。小さな尾根を直登しますのでかなり急坂です。下のまんじゅう屋さんで道を聞いていたとき、男の方 から「心臓破りの坂だよ」と言われましたが・・・
 四阿が道を跨ぐように建っています。南アルプスの冠雪の峰も見えます。平らで大きな岩が道に横たわっております。
 約1時間で赤鞍岳への分岐を過ぎます。そのうち道が緩やかになり25分で山頂への分岐に着きます。 ここから3分で山頂に着きました。この分岐から山頂までは両側の笹が刈られています。 山頂には前を歩かれたご夫婦と逆方向から来られた男性、私の4人だけでした。

 山頂から下って分岐から東北側(下尾崎方向)にやや広い平坦な広場がって二十六夜塔が建っています。 二十六夜の月待ち行事は狭い山頂ではなく、ここで行われたのでしょう。  下尾崎への下り尾根道は傾斜が緩やかで沢道に入って麓の集落に着きます。八重桜が満開でした。
浜沢のまんじゅう屋さん 二十六夜山への登山道、急坂 梁川駅に隣接する民家、桜もモミジも色が色々

 二十六夜(にじゅうろくやさん・にじゅうろくややま)について上野原市に照会しましたところ、旧秋山村誌の 一部をコピーして送って頂きました。旧字遣いですが掲載します。

夫廿六夜藍膳明王ハ、万民ノ諸悪災害ヲ防御シ、且養蚕ノ守護神ニシテ、(中略) 依テ茲ニ諸君ノ賛成ヲ得テ高金山頂上ニ一ツノ供塔ヲ安置シ、廿六夜ノ畑海ヲ拝礼、祈願所ト定ム、 希クハ四方ノ有志何分ノ寄付アラン事乞フ
但シ毎年祭日、旧三月九月廿六日ト定ム
明治廿二年九月日
(発起者連名と続きます)
 高金山が後、二十六夜山で、登山地図添付の冊子にも書かれています。当時の有力な産業だった養蚕 守護も名目に寄付を募っています。
注:「廿」は二十。藍膳明王は愛染明王か? 「畑海」は意味が分からない。「事」は俗字で書かれている。

 明治22年頃には二十六夜待ちの行事が行われていたでしょうが、夕方登って月の出を拝んで朝下山 するのか、或いは灯りを持って深夜に登山、下山するのでしょうか。何れにしても旧暦1月の深夜に月待ちするのは 辛かろうと思います。
 江戸では湯島天神などの高台や芝高輪、品川、川崎などの海岸あたりを中心に行われ、文化・文政の時代には 万来の見物客でにぎわったことが多くの文献で紹介されています。当時の状況は月待信仰の 名を借りた遊興娯楽の行事と化していたようです。廿六夜山ではどうだったのでしょうか。

 この二十六夜山は秋山二十六夜山とも呼ばれ、都留市にある二十六夜山は標高1297.3mで道志二十六夜山とも 呼ばれるそうです。Wikipediaで調べますと他に同名の山が静岡県賀茂郡南伊豆町にあり、標高310.7mです。 この二つの二十六夜山について情報があれば教えて下さい。

 二十六夜山縦走後は下尾崎から寺下峠を経て梁川駅に下りました。途中寺下峠の手前で道に迷って軽いヤブコギ をして峠の東側尾根に出て、一山越えて寺下峠に着くというように遠回りをしました。 先行していたご夫婦も同じように迷ったそうです。皆さん気をつけてください。
 山ではヒトリシズカ、ヤブレガサ、イカリソウを見ることができました。
(終わり)

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